たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

不完全さ  その2

人間は、完全なるものを、理想のものとして追及しているくせに、
反面それを現実に手にすることを回避している。恐れている。
どうもそう解釈するしかないなと思う。


先日職場で、若手と車のデザインについてこんな会話をした。
「車は空気力学的な抵抗が小さいほど、燃費もいいし、
風きり音もしないし、合理的な形態に近づき、美しく感じる。」
と私。
若手は、そうだそうだ、と同意する。


「空気抵抗が一番小さい形って知ってる?
魚の胴体のカーブや、ひれの曲線がそうなんだ。
新幹線にも応用されている。
だから、カツオみたいな形の車を作ると、速いし燃費もいい。
"カツオ車"が一番いいことになる。」
「それってイヤですね。誰も買いませんよ。」
と若手。
「なぜなんだろうね。理想なのにネ。」
「乗りませんよ。そんなロケットみたいな"カツオ車"。
みんな同じ形になってしまうし・・・」


そこなんだと思う。
理想は理想として認めながら、そこから少し逸脱したものが
人間は好きなのだ。不完全さを残した部分に惹かれる。
完全さは、神の領域か。