たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

西田文郎著『かもの法則』

あなたの歩む人生は、すべて「かも」が決めている!というわけのわからないコピーの帯に惹かれ、本屋で立ち読み。結局1章を読んだところでレジに行き購入しました。1章にエッセンスが詰込まれていて、そこだけ読めば充分ですと表紙裏に書いてあります。あとの部分は、手を変え品を変えグダグダと引き伸ばしているだけだから(賢明な読者は)あとは本閉じて行動してください、というようなことが書いてあります。1章は読んだわけですが、その先を読むなといわれるとその先には何かいいことが書いてあるのじゃないかと探りたくなります。じつにこちら側の心理を突いていて買わせ方がウマイ。わかっていながら結局購入してしまったわけですから。


これだけ鴨のイラストの載っている本は他にはないでしょう。でも鳥の鴨について書かれた本ではなく、人生を送る上で必ず遭遇する次のようなカモの話です。

  • このままでは、もう生きられないカモしれない
  • 私の人生には、苦しみしかないのカモしれない
  • 死んだ方がラクカモしれない

こういうカモを否定的なカモといい、ふと芽生えたカモがやがて確信に変わり人を死に追いやる結果を生むことになるのだという内容です。


このカモは、理性とか思考とかそういう理知的な種類のものではなくて、もっと深いところから湧き出してくるものだと説きます。予感というか予知というか感情を支配している脳の深い領域「大脳辺縁系」に関係しているのだと。だから理屈とか理性的な脳による、悪いカモの否定作業は通用しません。
で、否定的な悪いカモが飛ぶと行動が自己防衛的に偏り、脳は前進するための努力を放棄してしまうということです。ひきこもりの状態です。これは実に思い当たるフシがあるというかそのズバリというか、説得力があります。悪いカモがしっかり育って、負のスパイラルに落ち込んだときは、すべてが否定的に見え自分に不利で不利益なことばかり押し寄せてくるように感じるものです。そのことがますます、負の面を拡大して見ることとなります。


制御理論の世界にフィードバック理論という重要な考えがあります。行動の結果の一部を、行動の原因の方に戻してやるというループを組むのですね。悪い行動の結果を、原因の方に戻してやるため、ますます悪い結果が生まれてくる。どんどん悪くなる状態に陥り、抜け出せなくなるのです。行動の結果をそのまま戻すやり方を、ポジティブフィードバックといいますが、スピーカの前にマイクをおいたようなもので、限界まで状態が悪くなりこの系は発振します。


それはともかく、理性とか理屈とかの大脳皮質系の活動によっては、このカモを撃退することはできないということが書いてあります。大脳皮質系の活動をある意味支配している辺縁系の話ですからね。
自分を支えている足がよくないからといって、一所懸命自分の手で自分の足を取り替えようとしているようなものです。立ちながら手で自分の足を持ち上げた人はいませんよね。


本の後半には、カモにはもう一匹「希望のカモ」というのがいて、こちらのカモを飛ばす話になります。興味ある方は読んでみてください。とても簡単な話なのですが、ホントいろいろなことを考えさせられました。

かもの法則 ―脳を変える究極の理論



にほんブログ村 哲学・思想ブログ 心理学へ
にほんブログ村