サライ編集部編『千年語録』(小学館刊 2007年)
先日ふと見つけた座右の本となったもの。気持ちが空白になったときなどにふと開くようになった。
小学館発行の『サライ』に連載されたサライ・インタビューから、名言名句を集めて一冊の本としたもの。ページをたぐるごとにその道のプロたちが、その道のエッセンスを語る。
こんなに安易にその道の『奥義』や『秘伝』のような言葉を、ふと盗んでいいものかとも思う。おそらく呻吟してきた人生の果てにつかんだものばかりだからね。
今日、心に響いてきたのは、コラムニスト山本夏彦さんの次の言葉。
大切なのは空理空論です。株の話、ビジネスの話ばかりしていると卑しくなりますよ。中国の古典に「楚の国の南に、800年をもって秋とし、800年をもって春とする椿の大木がある」なんて素晴らしい言葉がある。こんな話はね、意味を捜そうとしちゃいけない。ただ陶酔していればいいのですよ。
岡田種男さんという私設緑園「椿山延寿林」を作り上げられた方の言葉が、やはり同じ本に収録されていて、ここで椿の木は寿命が長くて、「椿寿8000年」という言葉があるくらいだと紹介されている。
二つの言葉が妙に符合していて面白い。800年をもって秋として悠々と成長する椿の木が、樹齢8000年になるという。
厳しい冬の間にも葉を落さず、艶やかな葉の色さえ見せてじっくりと枝を伸ばす椿の不思議さを昔から語っていたのだなと。
岡田さんは、また、
私は木枯らしにたたずむ、葉を落した木々の姿がなんとも言えんくらい好きです。ありのままに、力いっぱい生きた潔い美しさがある。ひと役終えた清々しさですね。
と語る。
ああこれは分かる。ひとつの美の究極の姿だ。