たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

[身辺雑記]週末

閉められたカーテン越しに、夕陽が見えているが、乗客の迷惑を考えると、
これを開けて外の風景を見ることが出来ない。せっかくまだ日の高い時刻に、
東京から山梨、長野の風景の中をバスが走っているというのに。
もう春が間近となった日差しは妙にまぶしくて暑く感じるというわけだ。


ふと、子供時代から乗り物好きだった自分の行動のことを思った。
親に連れられて電車やバスに乗るや、即座にガラスに顔をつけて、
外が眺められる窓に張り付いてしまうのが常だった。
流れる橋げたの変化や、うねるレールの中を疾走する車体のスピード感といったら、
もう何ものもこれに抵抗することは出来ないではないか。
外を眺めたい!
これはもう本能に近い行動なのだろうと思った。


本能的な行動といえば、飼い犬を車に乗せて遠出をするときの眼の輝きや、
窓から鼻面を出し今にも脱出するかのような身の乗り出し方を思い出した。
子供時代の自分は、この飼い犬の表情と同じなのだろう。


やがて山の端に夕陽が沈みそうになり、ますます乗客はカーテンの隙間を完璧に閉じ、
安眠の妨げにならないように横方向に走る光線を遮ろうとする。
ああまったく、南アルプスの山並みに夕陽が沈む絶好の風景を眺められるチャンスなのに!
本能に駆られて子供時代にもどってしまった自分にとって、
バスは、まるで走るカーテンの監獄なのである。