混色の不思議、その謎がとけた
ずっと謎に思っていたことがらが、実は単純だったということは多い。
絵の具の混焼について謎に感じていたことがあった。
しかし、これは謎ではなく、普通のことだった。
たとえば「黄色」と「青色」を混ぜると、一般的にはそこには無かった「緑色」が出現する。最初から「緑色」の絵の具の発色と何がちがうのだろうか。混晶で作った色と、もともとの単色の色とは何がことなるのだろうということ。
色のちがいは可視光線の波長のちがいと対応している。
黄色と青色と緑色の光の波長範囲は以下のとおり。
・黄色 580nm ~ 595nm
・青色 435nm ~ 480nm
・緑色 500nm ~ 560nm
黄色と青色の混合が起きても、緑色の波長を出すわけではない。混合で作った緑色と、ほんとうの波長を持った緑色が、人間の目には区別つかないのかなと、長年思っていたわけである。
もっとも人間の目が、これらを識別できるとすると、絵の具の混色という技術は使えず、無限の段階をもった高価な色材を用意しなければならないので、それは絵を描くという作業がとんでもなく贅沢なことになってしまう。
地球に降り注ぐ太陽の光は、あらゆる波長の光からなっていて、連続的に変わる波長の光が混合している。その外側には紫外線や赤外線という目には見えない光も含む。
人間の目の機能についてふと思った。網膜にある色を感じる細胞は、錐体と呼ぶが、この錐体は3種類しかないのだった。赤に感じるL錐体、緑に感じるM錐体、青に感じるS錐体の3つだけである。(L、M、Sの名称は、波長の長い、中程度、短いに対応しているようだ)
もちろんそれぞれ感じる波長は、きっちりとした区切りがあるのではなく、広く分布している形で、主に感じる波長はどのあたりにあるかを示している。
・黄色の感じ方 M錐体+L錐体(緑と赤)が主に働く
・青色の感じ方 S錐体+M錐体(青とすこしの緑)が主に働く
混色した色を錐体はどのように感じるかについては、青から緑そして赤と全波長の範囲を感じているが、含む割合としては緑が多くなる。そして3つの色つまり青、緑、赤の光は、ほぼ等量混合されると色を感じない、つまり透明になる。(太陽光を透明に感じるのは、様々な光の混合のせいである)主たる成分の緑色を人間の目に識別するというわけである。
自然界にある緑色(太陽光の成分の緑色)と絵の具の混色で作った緑色は、物理的にみれば異なる波長のちがう物なのだが、人間の眼はそれを区別できないわけであった。感じている緑色の感覚は同じということになる。