たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

年末から年始に

昨年11月末に母が亡くなり、新年早々の3日に父が亡くなった。
母は脳梗塞認知症の長患いで、最期の3年間弱は、
意識が戻らないままの状態だった。
父の方は、昨年秋頃に胃がんが見つかった。
治療方針を決める際に、医師はこのまま放置という選択も
ありますとのことだった。
88歳と高齢でもあり、体力がもつのかどうか保証できず、
暗に手術は無理と判断されたようだ。


しかし父の意思で手術を選択。
その後の経過は想定どおり思わしくなく、
縫合部はつながらない状態が続き食べ物は漏れた。
相当痛みを伴いということだ。
結局、術後の衰弱がはげしく歩けなくなり、その後肺結核を引き起こし、
呼吸器不全で最期を迎えた。


つれ合いをなくした直後に、後を追うように、という表現が使われるが、
父の場合、あるいはそうだったかもしれないと思う。
若い頃から遊び放題、やりたい放題で、
母や家族に苦労を掛けっぱなしの父だった。
その償いもあってか、母が寝たきりとなってからは、
実にかいがいしく世話をしてきたと聞いた。
しかし母の葬儀の祭には、立ち上がることも出来ずに、
会葬は欠席。それからたった6週間後のことだった。


虐待とネグレクトの環境から逃げだすように、
すぐ離れて暮らすようになったのが自分。
そして妹の方は、つねに親元を離れず、
その環境の重圧から何十年と精神を病んできた。
でもそんな重圧も終末を迎えた。


この両親の元で生まれ育って、いろいろな出来事があって、
いまは60年余り。この60年余りは何だったのか、
そんな振り返りの思いが頭を巡っている。


これから父の葬儀のため、実家のある神奈川県に
向かう準備に入る。
じつは昨年10月に生まれた初孫の男の子が、
母親(長女)とともにこちらに(駒ヶ根)に滞在している。
安曇野に嫁いでいる次女が合流し、
家族一同での移動が始まる。

[絵画 日常]絵画教室で水彩画を始めた

絵を教えてくれませんかと画材店で頼まれて始まった絵画教室。
2年を少し過ぎた。生徒さんは増え続けて、もう15人ほどになる。
もうちょっと能力的、容量的に限界に近いと感じている。


今年の夏までは一貫して、鉛筆のみのデッサン中心の絵画教室で通してきた。
その理由は、やはりデッサンが基本だという考えがあって、
デッサンが出来ていない絵は、どこか絵が不安な感じがする。
わかっていて破綻しているのならいいのだが、
気が付かないまま、見る人に破綻を感じさせるようでは
いけないと思う。


そのための独特の教え方をしてきて、
いく人かの生徒さんの絵はものすごくしっかりとしてきた。
構図の問題がすこしクリアできてくると、
今度は、明暗(トーン)の扱いや、面で描くことなどが
テーマになるが、なかなかこれもわかってもらうのに苦労する。


そこで、鉛筆画はそこそこにして、水彩画を始めてみるのも
遠回りのようだが理解が早いかもしれないと考えた。
水彩画では線ではかけない。
どうしても面を塗る作業が中心になる。
トーンや、濃淡を見るにはいい練習になる。


例によって、生徒さんの前で、実際に描いてみせる方法で教えている。
思い切って水彩画の場合も、それを実践した。
下書きから彩色の始めの方を生徒さんが見ている前で描く。
その後、仕上げをする。
それを次回の教室で、また題材にするという感じだ。

鉛筆画とちがって仕上げに時間を要するので、まだ枚数はいっていない。

下の2枚ほどのサンプル画。
いずれも駒ヶ根の丸塚公園の風景だ。




稲刈りの始まる直前の頃。
広がる田んぼの風景。
F4 ホワイトワトソン 水貼り





公園の中の丘陵の景色。
F4 ホワイトワトソン 水貼り

絵画教室のメモ・リライト[鉛筆画][風景画][スケッチ]

今年になって野外で開いた絵画教室のメモをまとめて
アップします。3回とも駒ヶ根市の天竜川近く、
下平という地域にある丸塚公園で開催しています。


  • 2012年4月10日(月)丸塚公園

仕事はお休み。
そのかわり春になり、本年度の野外の絵画教室をスタートさせました。


新しい生徒さんが参加すること、
はたまた冬の間のブランクがあったためか、
始まる前の緊張感は並ではありませんでした。
(なんでだろう?)


冬の間のブランクは、自分がスキーをするためじゃなく(笑)、
冬の時期、駒ヶ根の野外はとても寒く2時間もいたら凍えてしまうためです。
以前、水彩の水分が紙の上でつぎつぎと凍ったことがあります。


わざわざ前日に現場の構図の下見をして、候補を2つ選びました。
ひとつは目の前に広がるひろい田園風景。
もうひとつは小川の流れの風景。


当日はとても緊張感の強い教室でした。
例によって、生徒さんが後ろから見ている前で、
スケッチブックに構図を描きながらポイントや注意点を説明します。


いつも始める前に、今日はうまく行くのだろうか?と心配になります。
だって白紙ですからね。今日はうまくまとまるのかい!?
それに生徒さんのほうが上手だったら様になりませんし。


ということで、たった10分ほどの孤軍奮闘ですが、
とても緊張しながら集中して鉛筆のサンプル画を描きます。
今回の構図は、公園の樹木の中を流れる小川が、
S字状にくねりながら流れる風景を題材にしました。


B4サイズ 鉛筆 2B、4B、2H 10分程度



  • 2012年5月14日(月)丸塚公園

休日の時間を使い、野外の絵画教室を開いています。
5/7と5/14の2回とも、幸い天候に恵まれました。


集まった場所は同じ丸塚公園という静かなところです。
絵のテーマをあえて変えるため、ひとつは広い景色の広がる田園風景、
もうひとつは公園の中の道の風景を選びました。


それぞれに描く上で、陥りやすい罠があります。
実際の現場で、それら注意点を鉛筆でサンプル画を描きながらデモします。


生徒さんの前で描いたサンプル画。
B4サイズの画用紙(あまり大きいと時間を要するため)、
鉛筆は2B、Hが主体です。時間は10分程度。




  • 2012年6月11日(月)丸塚公園

先日6月11日に開催した絵画教室のサンプル画をアップします。
今回のねらいは、水平線をしっかり意識して構図を決めること、
およびそれに関連する周囲のものたちのパース(透視図)を
きちんと決めることです。


風景画を描く際には、「H字型」構図で描くように教えています。
まず
(1)水平線を決めること。
(2)次に左右の端に納めるものの位置を決めること。


左右のものとしては、立ち木だったりベンチだったりしますが、
それを左右に配置すると、真っ白な紙のいっぱいに、
H字型に水平線と左右のものが描かれることになります。
生徒さんは、左右のどちらかの端から描き始めることが多く、
それから順に追って描いていくと、紙の反対側が空きになったり、
描ききれなくなって入らないということになります。
初めの頃は、紙の中央80%くらいの範囲に、
描きたいものをズバッと入れるのがけっこう難しいのです。


また水平線は、水平線の上にあるものが多いのか(山とか雲など)、
地面側にあるものが多いのか(田んぼの風景や川)によって、
下側に引いたり、上側に引いたりします。
真ん中に水平線を引くことはあまりしません
(日の丸構図で、ドーンと家を描くときくらい)。


H字型が決まったら、近い立ち木の根っこや、
家の土台が自分からどのくらい離れているか、
その距離により水平線の基準から下がる量を決めます。
足もとにあるものは、ほぼ紙の下端になりますし、
遠くのものは水平線に近いということです。


このようにしてH字型の骨格を基準にして、
描く対象物をどんどん位置決めていきます。
このようにすると、短時間で構図が決まることになります。


じつはこの構図のポイントは、もう一つあって左の案内板のパースです。
案の定、生徒さんの絵の案内板の上辺、下辺は、
水平線の消失点に向かわず、狂ってしまいました。


生徒さんの前で描いたサンプル画:
B4サイズ 鉛筆 2B、B、H 10分程度


日記のリライト(その2) 似顔絵の練習 [似顔絵][デッサン]

以前、次女の結婚式用に、ウェルカムボードを製作し、
そこに次女とお相手のかたの似顔絵を描きました。

それ以来ですが、今年似顔絵をちこょっと描いたことがあります。
おもに訓練が目的です。少し似ていれば、自己満足もあります。
下の記事は、そのとき書いた記事のコピペです。


■2012年3月22日 吉永小百合さん [似顔絵]

デッサンとはちがうけれど、形を見る訓練になるかもと思い、似顔絵を描いてみました。
顔を描くことは、似ているか似ていないかが、すぐ分かってしまいます。それだけ厳しい訓練になります。
実をいうと、このサイトの会員さんで、そんな訓練をしている方がいて、ちょっとまねです。


第1作目は、吉永小百合さん。
この方は本当に美人で、美人顔には特徴が少ないのです。バランスが取れていて難しい対象です。


鉛筆4B、H。月光荘スケッチブックF6、時間3h程度。



■2012年4月11日 仲間由紀恵さん [似顔絵]

吉永小百合さんに続いて、美人さんの似顔絵を描いてみたいと思いました。選んだのは仲間由紀恵さん。


でもこれは失敗だったかもしれないと思いました。
美人は顔が整っている
 ↓
バランスよく、特徴がない
 ↓
絵を描くに手がかり難
 ↓
似せて描くことが難しい

というような理由なのですが、とにかく難しい!
描いても描いてもなんだか近づかない感じ。
疲れ果てる対象です。


仲間由紀恵さんは、とにかくおでこがきれい。
そしてまゆがきれい。本物の持っているオーラというのか
美人を美人にしているその奥のものがなかなか出てこないのです。


もういいか、というところで区切りをつけます。


鉛筆4B、2B、H。月光荘スケッチブックF6、時間4h程度。

日記のリライト 大震災と犬 [日常]

ほんとうに久しぶりの更新です。
じつは書くものが無かったとか、忙しかったとか
そういうことではなくて浮気をしてました。
あるSNSサイトを中心に日記を書いていました。
それなりに記事が溜まりましたが、
結論から言ってそのSNSを退会しようと考えています。
その理由はまた記す機会があるかもしれません。
いまは書きません。といってもトラブルを起こしたとか
事件があったというのでなく、内発的なものです。


そこに記した日記は、それなりに膨大で、
退会とともに消滅してしまいます。
そこで残したいと感じる日記をリライトして
日にちをさかのぼり、ぼちぼちと書いていきたいと思います。
ほとんどがコピペになるだろうと思いますが・・・



■2012年3月9日 大震災と犬 [地震][犬]

今日3/9は、16歳まで生きた柴犬の命日に当たります。
ちょうど一年前の夕刻でした。
老齢で目もよく見えない犬が行方知れずになり周囲を探したところ、
ふだんは行かない温室の裏の水路で発見されました。


翌日、庭に埋葬してあげました。
生まれ変わりを信じているわけではありませんが、
なにかの木を植えてあげようと思い、
次の日3/11に家内と植木屋さんに出かけました。


その道すがら、車で信号待ちをしていたところ、
2時30分車が揺れました。走っていたら気がつかない程度です。
当時車が不調だったので、エンジンの様子かなと思いました。
でもエンジンは止まる様子も無く、
周囲にダンプカーでも走っているのかと見ると、
そんな気配もありませんでした。家内も揺れを感じています。


植木屋さんに到着すると、ラジオからニュースが流れていて、
たった今、大きな地震があり九段下にあるビルの天井が落下したという内容でした。
すぐあとに、今度は仙台の方でも被害が出ているという情報が入りました。
3時ちょうどくらいでした。
これが日本をどん底に突き落とした大惨事の最初のニュースでした。


地震の起きるちょうど15分前に車にいて感じた小さなゆれは、
なんだったのだろうと家内と首を傾げています。
周囲の人も知らないと言うし、地震情報もありませんでした。
大きな揺れの前にも発生する前震と呼ばれるものがあるそうですが、
詳細は不明のままです。


地震予知に莫大な予算が投じられているにもかかわらず、
今回の予知ができず、内心忸怩たる思いの地震学者の姿を追った
ドキュメンタリーを観ました。
今、地震モデルとして主流なのは、アスペリティ・モデルというもので、
異種のプレートで滑りあう境界面に、強く引っかかる部分(アスペリティ)が
あるはずで、ここが外れてしまうと地震が発生すると考えるモデルです。


このアスペリティの存在を探し、歪を予測することで、
地震予知をするという考え方ですが、そんな単純なことで済むのかと感じました。
大規模で広範囲の地殻の運動を、そんな単純化して考えることができるのか、
はなはだ頼りないのです。


植木屋さんで購入したのは山茶花の木でした。
根元にはクリスマスローズの苗を3本ほど植えました。
亡くなったものに形は無く、風のように吹き渡っているだけです
という歌がありますが、しかしなかなかそうは考えにくい。
山茶花を見ると愛犬ココの姿を思い出します。

アルシュ紙に描く

先日、自由時間を使って駒ヶ根の光前寺へでかけました。のんびりと古刹を眺めたい気分だったこと、そこから絵の題材を探すことが目的でした。今まで描いたことのないテーマで、水彩画を試みたい気分です。


山門をくぐり、小さな流れのところに橋が架かっていて、その先に本堂があります。この流れは淀んだ感じで、紅葉の落ち葉が沈んでいたりしていました。光が木漏れ日のように差し込んでいて水面に反射しています。


なんとなくこれだ!と言う思いでした。何度も何度も水路の周りを巡って、光線の向きなどをいろいろと探ってデジカメに撮影しました。


描いた水彩画は次のとおりです。

『光前寺の庭にて』透明水彩 アルシュ紙 54×34cm




こちらは描いている途中の状態です。
こういう場面がいちばん楽しくてワクワクしています。

ファブリアーノ紙で描く

イタリアから帰国したSさんから、大変貴重なお土産をいただいた。イタリアの水彩紙ファブリアーノ紙とフランスのアルシュ紙だ。なかなか取り組めずにいたのだが、ようやく、ファブリアーノ紙に水彩画を描いてみた。


いただいた紙はやや薄い200g。しかし水貼り(平貼り)すると収縮が強くて水貼りテープが切れてしまった。やり直すと今度は、一部が剥がれてきてうねりができてしまう。けっきょく透かしの入ったところを避けて、逆さまにして描くことにした。


下塗りをして驚いたのだが、横方向へのにじみの度合いが強く、微妙で複雑な斑紋がでやすい。水貼りでテープが切れるほど収縮が強いことと考え合わせると、たぶんこの紙は、長い繊維が漉かれていて、一本一本の繊維が横方向に長く走っているはずだ。そのため、水と絵の具の粒子が横方向へよく浸透して動くのだろう。


いままでこういう紙とは付き合ったことはなかったので、不思議な感覚にワクワクした。うまく使えば水彩らしい表現がいろいろとできる気がする。水彩紙らしいにじみ具合が大変気に入った。



『東伊那の夏』
水彩 ファブリアーノ紙 B3(570×380mm)サイズ 200g ほぼ白


デジカメ画像だとにじみ具合があまり見えない(道路の部分に少し見える)。原画に向き合ったときのドキドキ感がちょっと現れていないのが残念だ。この絵画は完全に室内で描いた。


下は、夏に現場で描いた鉛筆スケッチ。モチーフはこのスケッチの風景だ。
でも、だいぶデフォルメしたところもある。