次のステップにむけて
これまで描いてきた水彩画は、どちらかというとスケッチに近い存在だった。それを水彩画と呼ぶこともあったが、本作(タブロー)の水彩画との距離感はあった。
スケッチと本作のちがいのひとつは、線の扱いにある。
線とは太さを持たないものと定義されるが、この世の中には線というものは存在しない。3次元空間の中では、何がしかの太さを持った長い長方形しか存在しない。
それをスケッチでは線を抽出し、ものを表現する。いや、ある意味で線だけで表現する。色をつけるのはその線で囲まれた領域だ。この領域には、面の向きとかの概念はない。
実際の風景にあるのは、複雑な面の組み合わせからなる立体で、それぞれの面には、色彩と差し込む光線が作る影が存在する。明るさの異なる面が接しているところに、線が見える。でも、ほんとうは面の境界だ。線と思っているのは人間の脳の解釈である。
この面の持つ色彩と光と影による表現を行うときに、おそらく本当の水彩画になる。
とまあ、講釈たくさんなのだが、実際の水彩画はどうしたらいいのか何年も考えてきた。スケッチのような表現から脱するには・・・
このごろやっと、この路線にそった絵を何枚か描き始めている。
あいかわらず駒ヶ根の風景画に取り組んでいるのだが、どんな風に受け取られるのだろう。
最近しあげた3枚ほどを掲載する。
一枚目は、駒ヶ根を流れる天竜川の両側の流域にひろがる田んぼの風景。
じつは、かなり以前に新しい描きかたの試みをしてみたものの、まとまらずに放り出していた。スケッチとのちがいなどを考えているうちに、まとめられる気がしてきて仕上げたもの。
水彩画 43×35cm 紙はたぶんモンバルキャンソン紙
2枚目は、自宅前の道路の風景。こんな田舎に住んでいることが分かってしまう風景だが、これを描きながら、これまでとは違うものが描けるという自信のようなものを感じた。
水彩画 50×35cm マーメイド紙
3枚目は、同じく自宅周辺の風景。こんな方法で描こうと心に決めた一枚だ。柿の木の風情がとても美しく写真に撮影した。絵画の方は完全に室内で描いた。
水彩画 36×54cm マーメイド紙