たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

静物画に苦労する

教室で課題として取り組んできた静物画がほぼ完成したと思う。これ以上手を加えるとすれば、どの部分だろう。なかなか思いつかない。先生の目からはたぶん、不足の部分があるのだろうけれど。


意外に苦労したのはテーブルとその上に乗っている果物たちのリアリティに関してだ。テーブルについては、ものが落ちないような安定感、安心感があるか。丸い果物がコロコロと転がるのではないかと心配させるようではいけないと思う。それには画面の下部(テーブルのいちばん手前)の色合いを明るくして、手前に出てくるようにしなければならない。この絵ではかなり白い色彩にしている。白すぎて面白みが無いかもしれない。


あとは丸い果物たちの丸みを、表現出来ているか。影をつけてやれば出来るでしょ、と見くびっていたところがあった。実はこれがとても難しいことが分かった。なかなかうまく行かない。右上部から差込む光により影が出来て、さらにいちど果物たちやテーブルに当たった光がどのように反射し、ふたたびもの達に差し込むかその表現が重要なのだが。


観察していくと、テーブルに当たった光が、反射して果物の下側を照らす。テーブルの色合いも写っている部分がある。差し込む光によりできる明るい場所と影を1次的な現象とすると、反射した光による明かりや陰影は2次的な現象となるわけだが、この2次的な光の演出効果が、けっこうリアリティに関係している。1次的な影のなかに2次的な光による照り返しが混じっていたりする。このあたりをうまく表現できると、モノがそこにあるというリアリティが増してくる気がする。現実に起きている複雑な光の演出を、人間の眼は感じ取り記憶しているからなのだろう。意識はしていなくてもね。


水差しにゆりの茎が挿してある部分の表現は、光の屈折現象を間違わずに描けば水の存在が感じられるようになる。水の入ったガラスのコップに箸のような棒状のものを入れて外から眺めると、水中の箸は屈折で外側にズレて見える。そしてなんとなくだが凸レンズ効果で拡大され歪む。光が差し込むとレンズで光が集中して、中の物体が周囲より明るく感じられる。色彩としても明るいトーンを使うとなんとなく水の存在を感じる。


金属の表現は難しい。とくに今回の画題では、黒い塗装色のコーヒーミルをどう描いたものやら苦労した。形がとりにくい上に色彩も表現しにくい。ブルーをベースにして下描きをしたのだが、この部分は課題として残りそうなところだ。



『弥太夫のメモ』のアクリルコーナーにも掲載しました。




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