たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

「借り」をつくる

ある本を読んでいて気になる言葉に出会った。
その著者は、良縁に恵まれない女性から相談をたくさん受けるらしく、その理由について触れている。それはズバリ「人の好意を受けとらない」、「人に借りをつくらない」という姿勢が共通しているというのだ。食事の際におごってもらうことを嫌う。そんな場面でも、自分で払おうとする。借りをつくってしまうと重苦しくなるというのが主な理由。


「人に甘えてはいけません」とか、「自分で解決し自分でやりなさい」と自然に考えてしまうのは、幼い頃からそのように教え込まれてきたせいだ。しかし、よく考えるとそれはなぜなのだろうと不思議に思う点もある。どんなときでも人に甘えてはいけないのだろうか、どんな困難さに出会っても、自力で解決をしなければいけないのだろうか。


自分でものごとを解決し人に迷惑をかけないというスタンスは素晴らしい。しかし、同時に別の面から見れば、とても驕っていることかも知れない。自分には困難さを解決する力量や財力が充分に備わっており、あなたなんかの助けは不要ですと、言っているとも受け取れる。自らを全面的に信じている代わりに、人を信用していないともいえるわけだ。


人に迷惑をかけてはいけないという教えは、生きていく上での大切なスタンスだが、人の好意を受け取ってはならないと考えるのは、やはり少し違うなと感じる。
昔のように貧しい時代ならば嫌でも人の助けを必要とするし、人の手助けもしなければならなかったと思う。しかし豊かになった今、そんな必要性が減少しているのは事実で、その結果、人と無縁でも生きていけるようになった。


先の本の著者は、とても大切なものを失っているのではないかと述べている。
その大事なものとは「人の善意や好意を受け入れる」ということ。相手の人が「二人分を払いたい」「払うことで幸せな気分になれる」のなら、それは「貸し」とか「借り」とか言わず、受け入れることが「やさしさ」であり「美しさ」であると思うのです、と結んでいる。


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