たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

新しい働き方

米国でベストセラーになっているそうだ。新しい働き方(Work3.0)が始まるという内容のセス・ゴーディンの本。まだ通読する段階にいたっていないが、監訳者である神田昌典さんのまえがきが、結構刺激的だった。

たとえば近年、上場企業ではコンプライアンスが重視され、厳格な管理のもとに事業を行なうことが最優先されているが、管理にたけた人間が上層部を占めると、クリエイティブな仕事はとたんにスローダウンしてしまう。
誰も読まない書類の量産。分析ばかりの会議の連続、新しい商品企画は、確実に潰される。彼らに悪気はない。ただクリエイティブな理解ができないから、稟議を通すのに、大変な時間を要する。
こうした硬直化した組織は、十年後にはもはや存在しないだろうが、しかし、今はそれが主流だ。


セス・ゴーディン『「新しい働き方」ができる人の時代』三笠書房 p.5

この硬直化した組織の弊害は痛いほどわかる。およそ管理的な組織の枠にはまらなかった自分は、悪気はないけれども厳格に管理を貫こうとする有能な人々によって次第に会社の中で片隅に追いやられ、最後は自分で飛び出す結果になった。


なぜそのような提案を実行しなければならないのか?
キミはそんなことまで考えなくても良いのだ!
とかいろいろといわれ続けた気がする。
誰も読まない書類の量産もずいぶんと強いられた。パワーポイントのスライドショーのやり方など習熟する必要なんか全くないというのに。


管理を重視する組織というのは破綻することを恐れる。決めごとがつぎつぎと変化して進化していく組織など、管理できないからだ。ヒエラルキーが固定されその中で職務要領書にしたがって、せいせいとおとなしく仕事をしていればいいのだ、というわけなのだ。こういう硬直化が深化すると、破綻せずに組織がこの先ずっと維持されていくこと自体が、組織の唯一の目標になってしまう。もちろん目的を失った組織の存続をゆるすほどビジネスの世界は甘くはない。顧客の方に向いていない組織は自滅するだけだ。


在籍していた会社はその後、ますます管理の度合いを深めたようだ。研究開発的な「無駄な」要素は、すべてぬぐい捨てられたようである。かつて家族的とまで言われた社員を大切にする社風も失われた。先々代の社長の著書は、なによりも雇用を守る社是がこの会社の強みであると、家族主義をたたえるような内容であった。わずか何年かの時間が経過しただけなのに皮肉なことだ。それはみごとに捨てられ、いまや何次かのリストラが実施されている。理念すら持ち得ない組織になったように見える。


神田さんのまえがきに、硬直化した組織は十年後には存続していないと断言されているが、もっと早い段階で新しい波に呑み込まれてしまう可能性すら感じる。