たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

フェルメールの模写

友人の絵画作品展の初日に花を持って挨拶に出かけたら、すてきな水彩画が展示されていました。彼女らしい水彩絵の具の使いこなしで、なかなかの納得の水彩画が並んでいました。題材は、勉強に行っていたイタリアの風景が主でしたが、その横にフェルメールの「真珠の首飾りの少女」を鉛筆で模写したものも飾られていました。青いターバンを頭に巻いて振り返っているあの少女の絵です。


あ!と思いました。そうだ、この絵の少女の表情が気になって、前から描きたいなと思っていた自分に、このとき気づかされたのです。なんだか先を越されてしまったなという感じで、もたもたしている自分の姿が思い浮かび、描けるうちに描かなくてはと焦りにも似た気分になりました。


そんな刺激をもらって、お店で仕事のかたわら空いた時間に描いた模写鉛筆画が下の画像です。


フェルメール「真珠の首飾りの少女」の一部模写 F6サイズ 鉛筆2B トータル3h程度


描いているうちにフェルメールの巧みな表現技術に気がつかされました。光の点の入れ方や肌のグラデーションの掛け方。それにこの少女の一瞬の表情を捉えている表現力のたしかさ。すばらしい絵です。そして少女の表情からいくつかの謎がわきおこります。不意をつかれたようにあいた口はなにを物語るのか。これは、呼びかけられて振り返った瞬間を捉えようとしたものなのだろうか。あるいはこのようなポーズをフェルメールは要求したのか。


この少女のあどけない表情と、さらにこれからひとり立ちするまさにそんな年代の微妙な姿をうまく捉えるのはむつかしい作業でした。陰の表現はまだまだ不十分と感じています。また、どうしても年齢的に少し上の成熟した女性の顔に表現されてしまうのです。あどけなさをどう表現するのか。顔のどういう部分からそれが発散されるのか。もういちど描いてみたいと思いました。もうすこし低年齢の初々しい少女らしく。ますます魅了されてしまうすてきなフェルメールの絵です。