たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

やはりそうだったか、うつのクスリ

この頃わかってきたのは、うつで処方されるクスリが、回復に関してはプラシーボとほぼ同じ程度の効果しか持っていないことだ。治療薬としては、ただの砂糖水との(統計的に)有意な差が認められない。いっぽうクスリによる副作用は厳然としてあり、精神が朦朧としたり、運動機能への弊害が認められるということはある。


そのことを高田明和さんの最新の著書で知った。高田さんは医学博士で、ご自身も長いうつとの闘いと回復の経験から何冊もの著作を著した。これまで数冊くらいは読んできたが今回の本は非常に明快だった。

高田明和著『うつは「暗示」で追い払う (健康人新書)』健康人新書 廣済堂出版Amazonへリンク)


と同時に、昔から疑問に感じていたことへの答えが書いてあったことでもあり、とてもスッキリとした。その疑問は素朴で当たり前のことだ。単純に言ってしまえば、「クスリによりうつ状態から復帰するということ」の具体的イメージが湧いてこないということだ。


ここに、人生が失敗ばかりで、何もいいことがなく、人との競争にも破れ、さんざんな過去にとらわれて動けなくなっている人がいるとしよう。医者にかかって抗うつ剤を処方されたとして、どのような回復過程を経るのだろう?


こんな感じだろうか。
なんだか理由はわからないが、クスリを飲み続けたら、自分の人生は失敗ばかりではなくいいところもあり、いやむしろ成功したことのほうが多くて、忘れていたが競争に勝っていて順調な人生だったとも言える。かならずしも失敗とはいえない。周囲だってそんな自分を見て尊敬の念を抱いているかもしれない・・・という感じで、これまで人生をはかなんでいた人が、どんどん人生に前向きな考えに染められていく、ということがあるものだろうか?これは人生のいい面を忘れさせていた健忘症状が治るということだ。


あるいは失敗ばかりだったけれど、悲観する必要はまったくなく、くよくよしていた自分がバカだったという想念がふつふつと湧く、というような?これでは覚せい剤の高揚感と変わりなく、飲み続けることで、いつもハイな飛んでいる状態が日常化するという感じだろうか。クスリの力で元気ですという、クスリ依存症そのものだけれど。


クスリを飲むことで、考え方がぐるりと変化したり、自分の中になかった考えというものが天啓のように舞い降りてくるということが果たしてありうるだろうか?あるいはそういう自覚すら本人になくて、ある日その人と会話したら、ガラッとちがう考えの人間になっていたというイメージ?


どう考えてもクスリによる回復というイメージにムリがある。クスリっていったい何なのだろう?せいぜい暗い考えをしなくなる(つまり小難しいことを考えられなくなる)という効果ではないだろうか?寝ている人は、考えないし悩まない。これは当たり前。起きているとはいいながら、脳の活動はクスリで半分寝ている状態(つまり半覚醒状態)になっているだけなんじゃないの、という疑問だ。


ホントに回復する時には、それまでの考え方の間違い(正確には偏り)に気づくというプロセスが必ず入るのではないかなぁ・・・だから、もう元のうつ状態に戻ることはありませんと自覚できる状況ではないかなぁ・・・と思っている。