たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

木炭デッサン 〜カッパビーナス3回目〜

2回目が終わった時点で、首から胸へと落ちていく面のとらえや、左肩が手前につき出しているダイナミックな厚み感が弱いとわかった。つまりは、立体としてのとらえが弱いということだ。


先生からの指摘で、もっと黒くなってかまわないから木炭をたくさん使うようにとのアドバイス。ハイライトのような白い部分の陰影を忠実に描こうとすると、ほとんど紙の白味だけで勝負することになる。ということは木炭が塗りこまれない状態になる。トーンの表現には明暗の幅が必要だから、もっとトーンの落ちた領域で表現すればいいというわけか、と深く納得。


そこで全体的にトーンを落として、白味の強い肩から胸にかけての濃淡を追加して、描きなおしたのが下の画像だ。この日は、肩から胸へ、首から胸へとこの周辺ばかりいじっていた。


カッパビーナス 木炭紙に木炭


それに先生とのお話でわかったのは、写真のように忠実に描くだけでは木炭デッサンの完成にはならないこと(もちろん写真を撮るだけで忠実に目の前のものが再現されるかというとそう単純ではないが)。見えているものは見えているとしてそれはまちがいのない事実だが、見えているものだけの描写では写し取っただけの図で、立体表現としては未完だ。


つまり、描く人が表現したい意図をはっきりと意識して、木炭の濃淡表現を工夫し試みる必要があるということだ。いままで木炭デッサンは明暗を見る技術習得の鍛錬と思っていたが、やはり表現に踏み込む必要があることが明確になって、とても有意義だった。これは絵画全般、芸術全般にもつながる微妙な問題なのだが。


モデルのカッパビーナスの石膏はこんな感じ。肩や胸などはほとんど白。立体という感じはしない。それをデッサンの表現ではどのように処理したのか見てとれると思う。


次回から顔の部分の立体表現や、表情などのディテールの描きこみと、全体のゆがみなどを直していく。