たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

[絵画]模写の効用

今日は抜けるような青空で、スケッチに出かけたいところだが、仕事や用事が入ってしまい自宅にいる。


模写はあまりやる意欲が湧かないものだ。自分の創作ではないことが関係している。せいぜい元の絵に近いものが完成するという達成感どまり。


でも始めてみると分かるのだが、何気なく見ていた他人の作品がどのようなプロセスにより描かれて来たかを注意深く観察する機会を与えてくれる。


Photoshopの例えで言えば(一般的でないから例えになっていないが)、各レイヤーの積み重ねた結果が目の前の作品とすると、最終形から一枚一枚のレイヤー操作へと分解し、さらにそれら手順の組み合わせを推定するのが模写の作業だ。


まあ目の前の見えているものに容易に支配されるのが人間だ。見栄えだけだという人生観すらある。逆に言えば、それ以上深いところは考えないし考えられない。きれいな絵がどんなプロセスを経てきたかなどということは関心外だ。


水鳥だって湖にのんびり浮かんでいるかに見えても、水面下では必死に足を動かして泳いでいたりする。プロのスポーツ選手の華麗な演技も、そこに到達するまで裏でどんな積み重ねを経てきたかは分からないもの。


だから模写は、人には見せない裏でかく汗だ。だから苦行でもある。


[追記]そうそう忘れていた。なぜ模写のことなんぞ書いたのかというところ。じつは模写を始めた。雑誌『一枚の繪』に王軍さんの新連載の水彩画講座がはじまる。油彩的というか強い絵画だ。彼の強い水彩画に刺激されたのだ。