たぶん絵的なBLOG

画材店の店主がつづる絵画や画材のあれこれ

塚越寛氏《会社は社員を幸せにするためにある》

本との出会いは不思議な縁を感じるものだ。こちらが読みたいと無意識に感じているとやがて何らかの形で求めていたものが目の前に立ち現れる。長野県伊那市にある寒天メーカーの会長塚越寛さんが『リストラなしの「年輪経営」』という著作をあらわした。会社とは一体なんなのだろうと考えているこのごろ、目の前に偶然現れた感じのする一冊だ。


地元ではよく知られた異色の企業、伊那食品工業は、寒天の日本におけるシェアが80%、世界シェアが15%という寒天つくりのトップ企業だ。48年間連続して増収増益を続けているそうだ。『日本でいちばん大切にしたい会社』という本において取り上げられた5社のうちのひとつに紹介されている。最優秀経営者賞(日刊工業社2002年)、グッドカンパニー大賞グランプリ((社)中小企業研究センター2007年)の受賞など、中央にも知られるようになってきたようである。しかしそんなことは派生的なことだと思う。


会社の入門に守衛さんがいなくてオープンであること、会社の敷地内にレストランが設置され、公園風になっていて緑が守られていること、美術館のような展示会場があることなど、およそ通常の(大)企業の概念からは想像できないような伊那食品工業の本社には、これまでもいく度もお邪魔し、そのたびよくぞここまでやるものだと感心していた。


今回、塚越さんの著作を読み深く納得したことがある。そのエッセンスはつまるところ、次のような基本ポリシーから成り立っている。

  • 会社は社員を幸せにするために存在している
  • 社員が前より幸せになったと感じることが会社の成長
  • 人件費はコストではない。会社の目的そのものである。
  • 売り上げ、利益はそれらの成長を継続するための副次的なもの
  • 利益は経営のカス、ウンチである
  • 人の犠牲にたった利益は、利益ではない


とくに感銘深いのは、利益は経営のカス(ウンチ)であって目的ではないと明確に述べられていることだ。社員のために存続している会社が、健康体であることの帰結としてカス(ウンチ)が出てくる。ウンチを出す目的のために生きている人がいるだろうか、と書かれている。


しかし残念ながら小生の知る企業はたいてい、売り上げ目標ウン百億、利益目標ウン十億を標榜して、それを追及することがビジョンだったり行動基準だったりしている。数字はどこまで行っても数字でしかない。金額が目標なら儲かることなら何でも手を出す。反面、損なこと利益に反することは一切しない、ということにつながっていく。無駄をなくすとか怠けるなとか。その先に待っているのは殺伐としたガランドウの抜け殻企業なのだが。


参考(Amazonサイト):
1.塚越寛著『リストラなしの「年輪経営」』光文社 2009年2月

2.坂本光司著『日本でいちばん大切にしたい会社』あさ出版 2008年4月



にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村